これは私が以前勤めていたレストランでの出来事ですが、ある土曜日の夜、満席の店内に突如として下水の臭いが充満し、厨房の排水が完全に止まってしまいました。お客様への料理提供ができなくなるという最悪の事態に、店長は血相を変えて業者に電話をかけまくりました。しかし、週末の深夜ということもあり、なかなか捕まりません。ようやく見つけた業者は一時間後に駆けつけてくれましたが、その場で提示された料金は基本料金の二倍という緊急特別価格でした。さらに詰まりの程度を確認すると、屋外のマンホールまで汚水が溢れかかっている状態で、大型の高圧洗浄機を動員しなければならないとのことでした。作業は深夜二時過ぎまで続き、最終的な請求金額は十五万円を超えていました。その時の店長の落胆した表情は今でも忘れられません。この一件から学んだのは、グリストラップの詰まりは「起こるべくして起こる」ということです。その店では、アルバイトスタッフが面倒くさがってバスケットを掃除せずに放置したり、廃油をそのまま流したりすることが常態化していました。そうした日々の不始末が蓄積され、最も忙しい時に最悪の形で爆発したのです。緊急対応の料金が高いのは、業者が休日や夜間にスタッフを確保し、専用の車両を維持しているコストを考えれば当然のことです。このトラブルの後、店ではグリストラップ清掃のマニュアルが徹底され、三ヶ月に一度の定期清掃を導入しました。定期清掃の料金は一回につき二万円ほどで、年間にしても八万円程度です。あの時の一晩の損失と十五万円の修理代を考えれば、いかに予防が経済的であるかが明白です。グリストラップは目立たない場所にあり、汚い作業を伴うため敬遠されがちですが、そこを疎かにすると、いつか必ず高いツケを払わされることになります。排水トラブルによる営業停止のリスクをゼロにするためのコストを惜しむことは、飲食店経営において最も大きな過ちの一つであると言わざるを得ません。