私はこれまで数え切れないほどのトイレ詰まりを解決してきましたが、現場に到着して最初に見るのは、玄関先に置かれた「使い古されたスッポン」です。お客様の多くは、顔を赤らめながら「何時間も頑張ったのですがダメでした」と仰います。しかし、実はその頑張りが作業を難しくしているケースが後を絶ちません。プロの視点から言えば、スッポンという道具はあくまで「手前にある軽い詰まり」を解消するための応急処置用です。例えば、トイレットペーパーを一度に三、四メートル多く流してしまった程度であれば、スッポンは最高のパフォーマンスを発揮します。しかし、詰まりが排水管のさらに奥、床下や屋外に達している場合、スッポンで加える圧力は、管内の「空気」によって分散され、詰まりの芯まで届くことはありません。また、意外と知られていないのが、スッポンの寿命です。ゴムの部分が硬化していたり、縁が波打っていたりすると、便器との間に隙間ができ、十分な真空状態を作ることができません。これでは、どれだけ筋肉痛になるまで繰り返しても効果はゼロです。私たちが現場で行う作業は、スッポンとは次元の異なるアプローチです。まず、ファイバースコープを挿入して「何が、どこで」詰まっているのかを明確にします。もし紙詰まりであれば、高圧洗浄で管全体をクリーニングします。これにより、単に詰まりを取るだけでなく、数年分の汚れも一掃し、再発を防ぐことができます。もし固形物であれば、強力な吸引機で吸い出すか、最悪の場合は便器を一時的に外して直接除去します。お客様の中には「自分で針金ハンガーを使って突いてみた」という方もいらっしゃいますが、これは絶対におすすめしません。ハンガーの先端が配管の継ぎ目に刺さり、そこから水漏れが始まったり、最悪の場合は配管自体を突き破ってしまったりすることがあるからです。トイレの修理は一見単純に見えますが、実は非常に繊細な判断が求められる作業です。