トイレが詰まった際に頼りになるラバーカップ、いわゆるスッポンですが、これが全く通用しない場面には必ず物理的な理由が存在します。スッポンの原理は、カップ内の空気や水を押し引きすることで排水路内に急激な水圧の変化を与え、詰まっている物質を揺さぶって移動させることにあります。しかし、この手法が有効なのは、原因物質が水溶性のトイレットペーパーや排泄物であり、かつ便器のトラップと呼ばれる湾曲部に留まっている場合に限られます。もし、何度も力いっぱい作業を繰り返しても水位に変化がないのであれば、それは詰まりの原因が「非水溶性の固形物」であるか、あるいは「詰まりの場所が便器のさらに奥」にあるかのどちらかです。例えば、誤って流してしまったプラスチックの蓋や検温計、あるいは子供のおもちゃなどが配管の細い部分にガッチリと挟まっている場合、スッポンで圧力をかける行為は、異物をより深く、取り出しにくい場所へと楔のように打ち込んでしまう結果を招きます。また、最近の節水型トイレは、排水路の設計が非常にタイトであり、一度空気の通り道が完全に塞がれると、スッポンのような簡易的な道具では十分な真空状態を作れないこともあります。このような状況で無理を続けるのは非常に危険です。無理な加圧は、便器と床を繋ぐフランジ部分のパッキンを損傷させ、目に見えない床下での漏水を誘発する原因となります。もし五分から十分ほど試して効果が得られないのであれば、それはスッポンという道具の限界点を超えたトラブルであると潔く認めるべきです。次のステップとしては、止水栓を閉めてさらなる浸水を防ぎ、真空式パイプクリーナーのようなより強力な吸引力を持つ専用工具を検討するか、あるいは速やかに水道修理の専門家に依頼することが、被害を最小限に抑えるための賢明な判断となります。自力での解決に固執して状況を悪化させる前に、道具の限界を知り、適切な判断を下すことが、結果として修理費用を抑え、住まいの安全を守るための最善の道と言えるでしょう。
スッポンで直らないトイレ詰まりの物理的限界と次の一手