洋式トイレのタンクについている「大」と「小」の洗浄レバー。私たちは普段、何気なくこれを使い分けていますが、この大小のレバーが、タンクの中でどのようにして流す水量をコントロールしているのか、その仕組みをご存知でしょうか。そこには、電気を使わずに水の流れを巧みに制御する、シンプルでありながら賢い構造が隠されています。 タンクの内部では、底にある排水口を「フロートバルブ」というゴム製の栓が塞いでいます。洗浄レバーは、このフロートバルブに鎖で繋がっており、レバーを操作すると、この栓が引き上げられて水が流れる仕組みです。 「大」と「小」の違いを生み出しているのは、このフロートバルブが「開いている時間の長さ」です。 「大」レバーを操作すると、フロートバルブは完全に、そして高く引き上げられます。これにより、タンク内の水がある程度なくなるまで栓は開いたままとなり、結果として多くの水(約6〜8リットル)が便器へと流れ込みます。 一方、「小」レバーを操作した場合は、フロートバルブが少しだけ、あるいは低い位置までしか引き上げられません。栓はすぐに元の位置に戻ろうとするため、開いている時間が短くなります。そのため、タンクの水がすべて流れ出る前に栓が閉まり、少量の水(約4〜5リットル)だけが流れるのです。一部のトイレでは、レバーをひねっている間だけ水が流れる構造になっているものもあります。 このように、大小のレバーは、栓の開き具合や開いている時間を変えるという、極めてシンプルな物理的な仕組みによって、流す水量を調節しています。この賢い構造を理解し、正しく使い分けることが、日々の節水に繋がり、環境への配慮と水道料金の節約という、二重のメリットをもたらしてくれるのです。