洋式トイレの背後にあるタンク。それは単に水を溜めておくだけの箱ではありません。その内部には、電気を使わずに水の流れを正確にコントロールする、驚くほど巧妙な機械仕掛けのシステムが収められています。このタンクの構造を理解すると、なぜレバーを引くだけで水が流れ、自動的に止まるのか、そして「水が止まらない」といったトラブルがなぜ起きるのかが見えてきます。タンクの内部で主役となるのは、主に三つの部品です。一つ目は、水位を感知する「ボールタップ」と、それに連動する「浮き球(フロート)」です。浮き球は水に浮く性質を利用して、タンク内の水位を測るセンサーの役割を果たします。二つ目は、タンクの底で排水口を塞いでいるゴム製の栓「フロートバルブ」です。そして三つ目が、万が一の水位上昇に備える安全装置「オーバーフロー管」です。私たちがトイレのレバーを操作すると、この連鎖が始まります。まず、レバーに繋がった鎖がフロートバルブを引き上げます。栓が開くことで、タンクに溜まっていた水が一気に便器へと流れ込み、洗浄が始まります。タンクの水が減ると、水位の低下とともに浮き球が下がります。この動きをボールタップが検知し、給水を開始します。一方、便器へ水が流れきったフロートバルブは、自らの重みで再び排水口を塞ぎます。これで、タンクには再び水が溜まり始めます。そして、給水が進んでタンク内の水位が設定された位置まで上がると、浮き球も上昇します。この動きによってボールタップが給水を停止させ、一連の動作が完了するのです。もし、この仕組みが故障して給水が止まらなくなっても、水はオーバーフロー管から便器へ流れるため、タンクから水が溢れ出すのを防いでくれます。「水がチョロチョロと止まらない」というトラブルは、このフロートバルブが劣化してうまく栓ができていないケースが多いです。トイレタンクの構造は、水の力を巧みに利用した自動制御システム。
洋式トイレのタンクの中身はどうなってる