かつての洋式トイレは、一回の洗浄に13リットル以上もの大量の水を使っていました。しかし、環境意識の高まりと技術の進歩により、現代のトイレは驚くほど少ない水量で、より高い洗浄性能を発揮するようになりました。その進化の鍵を握るのが、洗浄方式の多様化です。 一昔前の主流だった「洗い出し式」や「洗い落とし式」は、水の落差と勢いだけで汚物を押し流すシンプルな構造でした。その後、より強力な洗浄力を求めて「サイホン式」が登場します。これは、排水路をS字に曲げることで「サイホン現象」という吸引力を発生させ、汚物を吸い込むように排出する方式で、日本のトイレ洗浄のスタンダードとなりました。 そして、節水競争が本格化すると、このサイホン式をさらに進化させた洗浄方式が次々と開発されます。代表的なのが「ダイレクト・ボルテックス式」や「トルネード洗浄」などと呼ばれる方式です。 これらの新しい方式は、単に上から水を流すのではなく、便器の縁の数カ所から、渦を巻くように計算された水流を発生させるのが特徴です。この渦の力で、少ない水量でも便器全体を効率よく洗浄し、汚物をきれいに洗い流します。従来のサイホン式が「吸い込む」力に頼っていたのに対し、新しい方式は「渦で洗い流す」力に重点を置いています。 この洗浄方式の進化により、現在では一回の洗浄水量が5リットル以下、中には4リットルを切る超節水トイレも登場しています。これは、20年前のトイレに比べて半分以下の水量です。 ただし、これらの節水トイレは、少ない水量で性能を発揮できるよう精密に設計されているため、トイレットペーパーの使いすぎや異物を流す行為には、従来以上に注意が必要です。トイレの構造の進化を理解し、その特性に合わせた正しい使い方をすることが、節水の恩恵を最大限に享受する秘訣と言えるでしょう。